夏になると、博物館の茶の間に狐面をつけた子どもが登場します。といっても赤地におもちゃやアルファベットを染め抜いた柄のじんべさんを着せた、人形ともいえない代物です。
去年の夏、このじんべさんを見つけ、あまりにかわいいので展示空間に出したいと思い、どのような形で出すかを考え、そうだ、狐のお面でお祭り風にしようと思いついたものです。
ちょうど博物館実習の大学生が通っている時期だったので、唯一の男子学生に紙粘土を渡して狐面の制作を依頼しました。あれこれネットで画像を調べた彼は、試行錯誤の末、かわいい狐のお面の形を完成。ところが白面が出来た時点で実習期間が終了となり、いたしかたなく次の実習生に作業を引き継ぎました。後任の女子学生もあれこれ図柄に迷いつつ、ついにこれに絵付けをして面が完成。さらに古い竹製の衣紋掛けを組み合わせて体を組み立て、足には新聞紙を固めた足をつけて、ようやく狐面の子どもが誕生したのです。
実習生2代にわたって作られたこの狐面の子、今日も茶の間でお茶目にお客さまをお迎えしています(ま)。
2013年07月19日
狐面の子
木は材木になっても生きている
博物館の台所に上げ板というのがあります。床板を取り外せるようにして、床下を物入れにする仕組みです。床下には木炭やぬかみそ桶、梅干しや漬け物を入れた甕、買い置きの醤油や酒瓶などを入れていたところです。下は直接地面なので気温の変化の影響を受けにくく、1年を通じて温度変化が少ないこと、冷暗所であることもあって貯蔵庫として重宝されていました。 この取り外す床板が「上げ板」です。来館者にはこの上げ板も上げて中をお見せし、床下収納について説明したりもします。そのときよくお話するのが、上げ板が季節によって膨張したり縮小したりするということです。いまの時季はちょうど隙間もなくぴしっと収まっていますが、空けにくいというほどではありません。ところがつい2週間くらい前の梅雨時は、湿気を吸った材がふくらんで、上げ板ならぬ「上がらない板」になるほど。床下収納をお見せするのも一苦労です。そして冬場になると、空気が乾燥しているので材は収縮し、全体で3センチくらいの隙間ができるようになります。
この家が建って今年で62年め。材木はその前から製材されているのでしょうから、そんな昔に材木になったものが、いまも呼吸をして生きているということに驚くと同時に敬う思いになります。
そしてそれにもまして、当時の日本では、市井の無名の大工さんたちですら、家を建てる時期によって上げ板の幅を調整していたのだということに驚かされます。
そんなことをお話すると、お客さまも一緒になって感心されています。つい見過ごされがちな上げ板にも、そんな奥深い話が潜んでいます(ま)。
カエルの行水
暑い暑い…とばかりは言っていられないのですが、それにしても梅雨明けと同時にスタートした今年の暑さの厳しいこと。
この日も朝から30度近い暑さでした。朝、水撒きをしようと思って井戸端のバケツを覗いたら、中でカエルがプカプカと。昭和の夏の情景といえば、行水もそのひとつですが、カエルも行水でしょうか。はたまたこの暑さにノビてしまったのでしょうか。結局、そのまま夕方までずっと気持ちよさそうに水に浸かっていました。
この暑さのなかでも訪ねてくださる方が大勢いらっしゃるのは、ありがたいかぎりです。縁側で庭木を渡る風を感じたり、棚の瓢箪を仰ぎ見たり、縁台でゆっくりラムネを味わったり、庭でカエルの写真を撮って楽しんだりとそれぞれの時間を過ごしていかれます(こ)。